有限会社田中工務店

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日本民家の再生~住文化の伝承

そもそもこの仕事の話を頂いたのは昨年2012年の7月のことでした。はじめて会社の事務所でお話を聞いた時のメモ書きを読み返してみるとこんなことが書いてありました。

現代風の家造りは好きでない。

古民家に興味あり

友達やいとこ、子供がよく集まる。→みんなでワイワイが好き

外部の工事

西面:物置減築して外壁雨板貼り(むささびが入る)

北面:押入れ下屋部分減築してサッシ取付け

東面:2階押入れ部サッシ撤去して雨板貼り、上部妻壁しっくい塗り

内部の工事

①風呂を現在キッチンがある奥に移動

②キッチンを現在の風呂があるところに移動

③玄関の天井低い→吹抜けにしたい。(丸太梁をあらわし)

とこんなふうでした。

この時点で今回のリフォーム工事が最終的に今のようなかたちとなるとは想像もしませんでした。

しかし、よくよく考えてみるとこの素晴らしい民家は代々大事に住み続けられてきて、今の当主であるお客さまもこの家を大事にしていきたいという想いがあったのですから、なるべくしてなった結果なのかもしれません。

最初の打ち合わせから2日後に現場を見せてもらい、この民家がどれだけの価値を持っていて手の入れ方によってどのくらい光り輝くものになるのかくらいは僕でも理解できました。しかし時代の流れの中でその当時の流行りだったプリント合板をはじめとする新建材が所々に使われ、経年変化によって味の出たせっかくの価値ある部位が隠されていました。

お客様には「このリフォーム工事はじっくりと計画を練ったうえで提案させていただきたい」と伝えさせていただき、御理解いただきました。結果的に着工まで1年の月日を費やしました。

それでは工事の内容を着工前と比べながらご紹介します。

外部についてはアタン波板貼りだったところは全て杉雨板貼りにしました。上部のしっくい壁については下地の土壁が傷みがひどいので木下地の上にケイカル板を貼り白塗装をしました。

それから冬囲いをすると部屋の中が暗くなって気分が滅入るとのことでしたので透明の冬囲い板クリアガードを窓上部に入れました。

玄関はアルミの引き違いサッシが付いていましたがこの家にはやはり木製の玄関戸が似合うということで杉材で作り、窓の部分には透明ガラスを入れて縦格子で中がまる見えになるのは防ぎました。現在では玄関戸はほとんど既製品サッシでガラスも中の見えない型ガラス。中が見えないということは外も見えないということなので外の様子が分かるためには透明ガラス+格子くらいがちょうどよいかと思うのですが。

それから着工前の冬の玄関の様子を見ていただければ分かるように大変雪深い地域ですのでどうしても玄関のところも冬囲いが必要となるのですが、今までは玄関の上に庇屋根だけでしたから冬囲いも柱を建てることから始めなければならず大変だということでしたので玄関ポーチは柱をしっかり建てて冬囲いも簡単にできるようにしました。

ここで一言。この家のリフォームで一番こだわったのはこの家が元々持っている価値をどう引き出すかということでした。今回の工事範囲の中では何と言っても玄関とその上部に隠れていた丸太の梁組のある物置がその価値ある空間になると最初に現場を見た時に気付きました。

人がこの家に足を踏み入れた時にまず体験するこの空間がこの家の一番の見せ場です。今までは低い天井のため暗くて圧迫感があった玄関が中二階物置の床を取り払うことで明るくて解放感のある玄関に変わるのです。

吹抜けの壁は土壁のままでも味があって良いかなと思っていたのですが、小舞下地が傷んでいるためか土壁を触るとボロボロと落ちてきました。さすがにこのままでという訳にはいきません。そこで吹抜けにするために撤去した中二階物置の床板を隙間を空けて貼り、その板と板の間をしっくいで塗りました。

実は中二階の剥がした床板を見た時にあまりにも良い風合いだったのでこれは何かに使えないかと考えていたところに、この強度のない土壁の問題が出てきてぱっとこのアイデアがひらめいたのです。

実用面だけでなくデザイン的にもアクセントになって良いだろうと確信した僕はお客様の了解も得ないうちから大工に板貼りを指示していたのです。自分の中ではお客さまにいくら反対されようとこれだけはやりたいと思ったのです。もちろんお客様にアイデアを話したところどんなふうに仕上がるか楽しみだと言ってもらえたのですが。

しかしこの板と板の間をしっくいで塗るのには大変な手間がかかり左官屋さんも大変苦労して施工していましたが、出来上がってみると予想したとおりにこの建物の一番の見せ場となりました。

それでは他の施工箇所もご覧ください。

見ての通り、水廻りは使いやすさとコストを抑えることを優先させました。

抑えるところは抑えてこだわるところは徹底的にこだわるメリハリが予算の限られた工事では大事だと思います。

今回の工事は終わってみれば施工範囲も当初の予定からかなり広がり、工期も4カ月というリフォーム工事にしては長丁場となりました。工期に関しては左官屋さんが他の現場に入っていて少し工事に空きができたこともありますが、じっくりと良いものを造りたいという施工者側の想いもあったので結果的に良かったと思います。

工事範囲が増えたのはリフォームで見違えるようになった部屋を見て、お客様の方で他の部屋も良くしたいという欲求が生まれてきた結果だと思いますので施工者としては大変うれしいことです。

今回の工事を終えて思ったことは価値ある建物は設計者・施工者だけでできるのではなく、その建物を使う施主さまを含めた三位一体で造り上げるものだということです。特に長い年月を経てその建物を価値あるものに変えていくのはその建物に代々にわたり住み続けていく施主一族の建物を愛する気持ちだということです。その建物を建てた先祖の事を考え、メンテナンスやその時代の生活に合わせたリフォームをしながら大事に住み続ける。簡単なようで難しいことかもしれません。

現代の家造りを見ていると30~40年の一代で家を建て替えるのも普通のこととなってきています。まさに使い捨て時代の象徴と言えるでしょう。これからは最近の中古ブームや環境面から考えても長く住み続けることを視野に入れた家造りに人々が共感してくれる時代になっていくと思います。僕個人としても時代に関係なく、住み続けるうちに価値が高まるような建物を施主・設計・施工の三位一体で造っていきたいと思います。

2013年11月7日-11:03 AM

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