有限会社田中工務店

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残すという選択(長岡市栃尾地域)

お客様よりトイレの改修依頼があったので訪問してみると・・・

 

トイレを広くするというのが第一の希望だったのですが広くするには土蔵の扉が片方だけ観音開きにできなくなるのです。

 

今までは下の写真のようなかたちで観音開きにしたままで使っていたのですね。

 

 

トイレのスペースを広げると扉は90度までしか開かなくなります。

 

この扉の処遇をどうするかで悩みました。

 

中途半端にしか開かないなら撤去した方が良いのではと思い、お客様にそう切り出すとあっさりと撤去して良いとの回答。

 

ではこの扉を撤去するのにどのくらいのお金がかかるかと土蔵の扉について調べてみると・・・

 

この蔵戸は丁番という鉄でできた金物で木で組んだ扉の骨組を吊り込み、その木の骨組に何層も土を塗り込んでいって最後に漆喰を塗って仕上げるのです。

 

しかも扉端部と扉に接する壁は段々に仕上がっていて、閉めた時には扉と壁の段々がピタッと合わさるのです。

 

扉の厚みは40~45cmくらいあります。扉1枚の重さを計算してみると600kgくらいになります。普通の建具みたいに扉だけを外すことができないのでこの蔵戸を撤去すると丁番はそのまま残るでしょうし蔵の壁にも影響があるかもしれません。

 

工事の大変さなんてことよりも当時の建て主さんのこの蔵に対する思いとか当時の職人さんの苦労とかを想像してしまうと簡単に壊すなんて考えた自分が恥ずかしく感じました。

当時の職人さんはこの扉を造るのに多分数カ月の時間を費やしたのではないかと思います。というのも蔵自体の塗り壁工事だけで左官屋さんはだいたい1年間くらい現場に通っていたなんてことを人から聞いたからです。

今時の家が3~4カ月くらいの工期で完成するのを考えると時間の感覚の違いにただただ驚きます。

いくら当時の手間代が安いとはいえ大工さんや左官屋さんをそれだけの長期間雇っていられたのですから、当時のお金持ちの財力もすごかったんでしょうね。

先ずは着工前写真を。

 

工事前は蔵戸が180度開くようになっていました。

 

そう、この蔵戸には間違いなく歴史が刻まれているのです。

その時代の風潮、建て主や代々その蔵を使ってきた人々の想い、職人さんの技術や苦労や想い等々・・・いろいろなものが詰め込まれ塗り重ねられてきた扉なのです。

僕は最初の蔵戸撤去の提案を撤回し、蔵戸を残した形でのプランを作りお客様を説得したのは言うまでもありません。

お客さまは蔵自体の解体も視野に入っていたみたいですが僕の必死の説得に何とか納得していただきました。

今後は蔵自体の土壁の落ちた箇所をどのように改修して保存していくかというのが僕の中の課題として残りました。

ではリフォーム完成後の様子です。

トイレを広くするために間仕切り壁を廊下側に移動し、入口の位置をずらして引き戸に。(着工前と比べてください)

今回のリフォームでは残すという選択をしましたが、いつもそれが正解という訳ではありません。

残す価値のないものもありますし、価値はあっても総合的に判断して撤去やむなしということだってあります。

人生と同じでケースバイケースですね。

2015年8月6日-2:23 PM

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